32号「弱さの回復」向谷地 生良(むかいやち いくよし)さん


北海道医療大学看護福祉学部教授  臨床福祉学科臨床福祉学講座
自宅: 057-0021 北海道浦河町潮見町17-50 ℡・Fax 0146-22-0813
職場: 061-0293 北海道当別町金沢1757 ℡・Fax 0133-23-1307
E-mail:ikuyoshi@hoku-iryo-u.ac.jp/
nohonoho9@hotmail.com

弱さの回復


 ソーシャルワーカーとして精神障害を持つ人達の生活支援に関わってちょうど30年が経ちます。私が住む北海道浦河町は、えりも岬に程近い太平洋岸沿いの小さな街です。その街の一角に、精神障害を持つ若者たちと築いてきた地域活動拠点「べてるの家」があります。過疎化が進む小さな町で、私たちは、さまざまな事業を起こしてきました。日高昆布の産地直送や、会社を作っての介護用品の販売などです。出版活動や、全国各地への講演活動も活発です。今から25年前、事業の最初の立ち上げに参画したのが、気が小さく、自称「精神ばらばら状態」で入退院を繰り返していた早坂潔さんです。

 以来、私たちは、何か新しい事業を立ち上げる時には、その場で最も“頼りない人”を中心に据えて仕事を始めるようになりました。早坂さんが、自分たちの中にいると、不思議に私たちは、安心して事業に取り組めるのです。根気が続かず、同じところにじっとしていることが難しい潔さんですが、販売に関しては、お客さんの気持ちを上手に掴むばかりではなく、目の前で“ぱぴぷぺぽ状態”になり、心配したお客さんがついつい買ってあげたくなる“技”も持っています。

 そこで知ったのは、彼は“弱さ”を通じて私たちをつなぐ接着剤の役割を果たしていたということです。よく考えてみると、この“弱さ”や“脆さ”というのは、私たちも同様に持っています。あるべてるの女性メンバーが言いました。「秋葉原や最近の事件をみると、自分の生きづらさと重なるものがある」と。その彼女のかかえる自分の存在へのイメージは「自分は生きていてはダメだ。」「自分は虫けらのようなものだ」「自分には存在する価値がない」ものでした。それは、自分が抱える“弱さ”を欠点と考えて、除菌クリーナーを振りかけるような自己否定の中で、“無菌”な自分を目指そうともする中で生じる存在の危機だということが出来ると思います。しかし、大切なのは、その“弱さ”が人と人とのつながりの中に活かされたとき、私たちは「自分が存在するということ」も「自分がここにいて良いんだということ」も、初めて実感できるようになることです。
私は、長い間、べてるの家の活動を一緒に担ってきた潔さんたちから“弱さ”の可能性や価値を教えられ、“弱さ”の排除が、人の排除につながり、自分という存在の否定につながることも身をもって体験してきました。いま、大切なのは“弱さの回復”なのです。

*「名古屋べてる祭り」でお目にかかった日から早いもので12年たちます。「ソーシャルワーカーの大切な役割は、危機に瀕した一人の人間の命と暮しを守り育むこと」、という向谷地さんの文章を目にした時、いつも飄々としながら、注がれていた眼差しの深さを思い出しました。


33号「田んぼに魅せられて」高山 博好(たかやま ひろよし)さん



動物写真家・
耕さない田んぼの学校「エコたん」主宰

〒448-0033 刈谷市丸田町6-40-3
電話番号:090-4232-6825
mail:takaram@katch.ne.jp

田んぼに魅せられて

 「まだこの年になって勉強するの?」 何度聞かされただろう。40歳過ぎてから大学・大学院に進学したから、言われるのも無理のない話なのだろうか。成人したら学校へ行く余裕はない、というのが大半の意見かもしれない。「アメリカなら社会人大学生もいるけど」「中年のひねた学生が来た」など、教官からもいろいろ言われた。

もともとは水族館の飼育員だった。2つ目の勤務先水族館では、見学者の体験学習担当を与えられた。水族館を見学するだけではなく、動物や自然とのふれ合いの体験を通じて、従来型の水族館以上に自然や動物愛護に理解を深めてもらうためだ。 体験学習や環境教育に携わり、それが面白くなった。最初の水族館を退職して以降はフリーの動物カメラマンとしても活動していたから、写真と環境教育を結びつけたい気持ちがムクムクしていた。すぐに環境教育を学べる場を探し、琵琶湖という大きな水環境を抱える滋賀県に滋賀大学教育学部環境教育課程を見つけ受験・入学した。「したい」から「する」までが短期間で自分でも驚いた。環境教育の実践や愛知万博での里山インタープリータが私の教育実習みたいなものだった。その後はさらに研究欲が出て名古屋大学大学院環境学研究科まで行ってしまった。

 大学・大学院とも、水田の生態学を研究対象にした。水田は三河平野に育った私の原風景であり、遊びの原点でもあった。大自然ではなく農地でありながら多く生きものが生息する水田の生態系は変わっていないように見え、多忙な現代人はその激変ぶりに気づいていない。しかも水田は農地という人の手の入った空間であるから、従来の生態学の対象にはならなかった。しかし、安全・安心な食料生産している農場を何か評価できないか、ずーっと考えていた。大学では農法で生物群集がどう変わるか、珪藻で比較した。大学院では、めっきり見られなくなった「水田で産卵する魚類」の生態と漁撈について研究した。やはり水田には興味が尽きない。

そして今、石油で作物を作るような農業に対する挑戦として、「エコたん」と名づけた田んぼを始めた。田んぼを「耕さず」に化石燃料も化学肥料も農薬も使わずに、永続的にできる循環型農業の提案だ。「昔の農法に戻るのね」と言われるが、古代から鍬が存在するように耕すことが農業の歴史だった。耕さない農法(不耕起農法)はここ20年ほどの最新の農法だ。日本人たるもの、米くらい自分で作れなくてどうする! そんな仲間が集まって、この夏「ふゆみずたんぼ・知多普及会」なるものを立ち上げた。環境負荷の少ない農法の広報と普及を高める活動をしていくとともに、個人的には米を粒食だけでなく粉食としてのメニュー提案と、水田の生態系の再生(特に魚類)を試みている。

名古屋べてる祭りに、ソーシャルワーカーの奥様と一緒に来られ、さすが動物写真家は柔らかな空気を漂わせておられるものと思ったものでした。8月にRisaというフリーペーパーに掲載して頂いた折、“エコたん”の高山さんの連載記事があり変身ぶりに驚きました。「ご一緒していたのを、気づかれましたか?」のメールを頂き御縁復活です。





37号「生まれ育ったまちでずっと暮らしていくために」木村真樹さん 2009.9

木村真樹(きむら・まさき)
コミュニティ・ユース・バンクmomo 代表理事
〒460-0014
愛知県名古屋市中区富士見町9-16 有信ビル2F
tel: 052-331-5695 ※留守番電話での対応となります。
fax: 052-339-5651
e-mail: info@momobank.net
URL: http://www.momobank.net
個人サイト: http://www.kimura-office.net/

「生まれ育ったまちでずっと暮らしていくために」


実際には行きませんでしたが、25歳のときから「新婚旅行で行きたい!」と思っていた国があります。それは「インド」です。新卒で勤めた地方銀行を退職後、インドのNGOで3週間ほどインターンをしていたのですが、その現場がどうなっているかを自分の目で確かめてみたかったのです。

 そのNGOは、国連が「最貧困」と定義する1日1ドル以下の所得の人たちが約80%暮らす村で、“水”に関するプロジェクトを実施していました。乱伐のため保水力を失った山に木を植えたり、雨水がふもとの村まで流れるように用水路を作ったり、なるべく水を使わずに育てられる食物の作り方を指導したり、生きていくために不可欠な水を政府(GO)ではなく、NGOが管理せざるをえない現実がそこにはありました。
帰国する当日、ぼくは小さな子どもを抱えた村のお母さんに呼び止められ、こう告げられました。「この子を日本へ一緒に連れて帰ってくれませんか? 日本は豊かだからきっと幸せになれるはず」。本気か冗談かわかりませんでしたが、彼女の真剣な表情だけはいまでもよく覚えています。

 そして帰国後、最初に見たテレビから飛び込んできたのは、ネット上で出会った若者数名が自動車の排気ガスで集団自殺したというニュースでした。生まれ育ったまちで、ずっと暮らしていきたくても暮らしていけない子どもたちが世界にいる一方で、あまりにも安易に自らの命を絶つ若者がいる日本。この“いびつな構造”をなんとかしたい。これがコミュニティ・ユース・バンクmomoに取り組む原動力のひとつです。
 「momo」という団体名の由来でもある童話『モモ』を書いた、ドイツの児童文学作家ミヒャエル・エンデは、経済活動の前提条件である筈の自然資源を破壊してしまう経済システムの矛盾に目を向けて、「お金」を次のように捉えました。「重要なポイントは、パン屋でパンを買う購入代金としてのお金と、株式取引所で扱われる資本としてのお金は、二つの異なる種類のお金であるという認識です」(NHK番組『エンデの遺言』より)

 毎日、何かに追われるように忙しかったり、人間が本来持っていたはずの感受性や豊かさが知らず知らずのうちに奪われていたりする。そんな今の世の中の根本原因は、預金したお金がグローバルに流れ、目に見えなくなってしまっているような、お金の仕組みに端を発してはいないでしょうか。momoでは、地域のみなさんの「自分たちの地域は自分たちで担う」という当事者意識を育むために、地域の未来を担う“若者”たちが中心となって、誰にも大切な“お金”を出資で集め、持続可能な地域をつくる事業に低利・無担保で融資をしています。これをぼくらは「お金の地産地消」と呼んでいます。
 人が地域で暮らし、交流し、支えあう。お金によって切れたはずのつながりが、お金を通してもう一度つながる。金融という目に見えないものを“見える化”するぼくらの取り組みには、生まれ育ったまちでずっと暮らしていくための多くのヒントが隠されています。

*初めて木村さんの講演を伺った時、そのしなやかさと、行動力に、「今どきの若者ってすごい!」と感動しました。聞けば当たり前で、なかったのが不思議と思えることは、必要とされることと改めて思いました。




38号「カンボジアの子らに笑顔を運びつづけたい」赤尾和美さん 2009.11

赤尾和美(あかおかずみ)
看護師( HIV&訪問看護専門家)
カンボジア王国シェムリアップ州のアンコール小児病院(AHC)
c/o Angkor Hospital for Children
P.O.Box 50 Siem Reap, Cambodia
http:www.angkorhospital.org
e-mail :kazumiakao0520@hotmail.com
NPO法人フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーJAPAN
http://www.fwab.jp/

カンボジアの子らに笑顔を運びつづけたい


1999年5月に初めてカンボジアの地を訪れ、早10年。“あっという間”の、そして、“まさかこんなに長くいるとは”の10年でした。
当時、私の恩師が、カンボジアのアンコールワットのある街、シェムリアップに新設されたアンコール小児病院で看護部長を務めていました。そして、「カンボジア人に看護教育をするボランティアをしてみない?」と誘われ、2か月の予定で行ったのが最初。2か月は、ちょっと長すぎるかもしれないなぁ・・と思いながら行ったカンボジアでの経験は、私を人生の岐路へと導いたようです。

 「なぜ、カンボジアに10年も?」ということを多くの方に聞かれますが、実は、最初の1週間は、早く帰りたくてどうしようもありませんでした。蟻がたかる点滴に見向きもしない環境の違いに、何を教えたらいいのやらと悩み、後悔ばかりでした。それが、 少しずつですが、“目から鱗”の毎日を楽しんで過ごせるようになっていました。ずーっと忘れていた“五感”が呼び醒まされたのです。汚いものは隠し、臭いものには蓋をして、きれいで早くて便利が一番と思い込んでいたそれまでの自分に気付かされ、何事も簡単にボタン一つで終わってしまうのではなく、時間を費やすことの大切さ、またその楽しみを発見したのです。
 肌に突き刺さるようなスコールに打たれ、ドロドロの田んぼにはまり、ごみの山からの強烈な異臭を嗅ぎ、何をするにも大変なこの場所で「もう、いやだ~!」と叫びながらも、心の底では、ちょっとワクワクする“不便の心地よさ”を教わり、そんな生活からたくさんの生きるエネルギーを浴びてきました。

 カンボジア人スタッフへの看護教育は、まさにチャレンジの連続でした。私の当然が彼らの当然ではないからです。そこで、思考の変換!押し付けは、無意味。当然を振り払い、新しい方法を考えること。時間はかかりましたが、少しずつ先が見えてきた時には、思わずガッツポーズが出るほどの達成感です。この仕事していてよかった~と思う瞬間ですね。人生の中で後悔することは度々ですが、仕事に関しては後悔をしたことがありません。とにかく、楽しくなければ仕事じゃない。父の闘病を経験し、体育教師になる予定が、一番なりたくなかった看護師になり、こんなに満足させてもらえるなんて、全く想定外でした。
 この10年、カンボジアは、急速な経済成長を遂げました。しかし、その陰では、苦しむ子供を目の前に病院への交通費が無く、亡くなってしまった患者さんや、食べ物がなく、道端で死んでいた犬を拾って来て食べている家族が存在しています。こういう患者さんの顔に笑顔をもたらすことは、これまたチャレンジ。まだまだやることがたくさんです。
日々接する子供達から、一杯エネルギーをもらい、私はこういう人たちに囲まれて生かされているんだなぁ・・と感じています。だから、私の力の源であるカンボジアの人達に何か恩返しをしなくちゃと思うのです。これからも、より多くの患者さんへ笑顔を運ばなければね。

*友人からのメールで知ったアンコール小児病院・赤尾さんの活動。過酷な状況下に生きる子どもたちへの想いの深さ、行動力のすごさと、大変と思ったことがないとの言葉に感動しました。




39号「大丈夫!」福田純子さん 2010.01

福田 純子(ふくだじゅんこ) 
(有)福田純子オフィス 代表取締役 
笑顔共和国大統領
〒815-0083 福岡市南区高宮1-3-29 LM高宮5-702
TEL 092-531-3711 FAX 092-531-1211
HP http://fjo.egao-kyowakoku.co.jp
mail 369@egao-kyowakoku.co.jp

大丈夫!


の35年間、エッセイストとして15冊の著書はじめ、講演・セミナーなどを通して笑顔人生の素晴らしさを語りかけてきました。笑顔がひとつ増え、「ありがとうの心」がひとつ増えれば世界は着実に平和に向け一歩前進すると信じているからです。
 私の人生にもいろいろな関門がありました。そのたびごとに「試練でなく登竜門」と受け止め、いつも笑顔でありたいと意識し、実践し続け、笑顔によってどんどん変わっていく自分を知り、周りも明るく変わり、ものごとが好転していくことを身を持って知ってきました。笑顔の習慣が試練を乗り越えさせてくれたのです。

 みんなが不安がっています。いまのこと、これからのこと。自分のこと、家族のこと、会社のこと、国のこと、環境のこと、地球のこと…。どうしてこんなに不安なのでしょう。もちろん、一つひとつ理由があってのこと。不安の芽を一つひとつ刈り取るために、人は、国家は、地球は英知を傾けています。でも、刈り取っても、刈り取っても不安の芽はいっこうに減りません。なぜでしょう。
 不安の芽は心に根を張っているからなのです。○○がないから、不安。この○○には、お金、家族、恋人、安全、健康…、いろいろあります。では、これらの不安の理由がなくなれば、不安はなくなるのでしょうか。例えば、「お金があるから、安心」「恋人がいるから、安心」と言えるでしょうか?「お金」はあるけど、もっとないと、…不安。「家族」はいるけど、それぞれの将来がどうなるか…不安。――「健康」だけれど、いつけがや病気に見舞われるか、…不安。結局、私たちは、○○がないから、不安。○○があっても、不安。なのです。不安の中から幸せは訪れません。

 原因や理由があって、結果として不安になる、と思いがちですが、そうなのでしょうか。ほんとうは、私たちの心に根を張っている不安の芽が、「不安の原因」や「不安の理由」をわざわざつくりだしているのではないでしょうか。私たちの内側で起きたことが、結果として周囲に現われ出ているとは考えられないでしょうか。自分が「不安の原因」や「不安の理由」を引き寄せているなら、そろそろこの辺で不安の連鎖を止めたいものです。
その突破口はおまじないの言葉「大丈夫!」どんな状況に置かれても、この言葉によって私たちは立ち上がることができるのです。自分ではどうにもならなくなると、人はよく「困ったときの神頼み」をします。そして、それでもよくならなければ「神も仏もあるものか」などと勝手なことを言いますが、そのときにお出ましになるのが「神」。その「神」こそ、自分の中の神通力なのです。「大丈夫」は、その神通力を呼び起こすおまじないの言葉!今年は大丈夫を口ぐせに笑顔で過ごしてみませんか?

*笑顔共和国大統領の純子さんと初めてお目にかかったのは20年前。大和信春先生の第一回熟考塾でした。その折、みんなで「わたしはシ・ア・ワ・セ」の練習をして笑い転げたことが忘れられません。「IQより愛嬌」、「笑顔は環境適応力」等々多彩な笑顔語録を生みだされ、笑顔の種まき運動を展開されています。






40号「フェアトレードでつながる命」土井ゆきこさん 2010.03

土井ゆきこ(どい ゆきこ)
フェア・トレードショップ 風”s(ふ~ず) 
http://www.huzu.jp/
e-mail: huzu@huzu.jp

名古屋をフェアトレード・タウンにしよう会&GAIA(がいあ)の会
http://www.nagoya-fairtrade.net/
〒461-0016 名古屋市東区上竪杉町1ウィルあいち1F
(T&F) 052-962-5557

フェアトレードでつながる命


は、ごく普通の女の子でした。特に秀でたものもなく、四人兄弟の末っ子で、多分のびのびと暮らしていたと思いますが…。高校時代も本を読むわけでなく、何かに熱中するわけでもなく、政治など社会問題には無頓着で、高校卒業後選んだ損保会社も4時に終わるのが理由でした。
 そんな私の一つの転機は、三人の子育てをしていた時、マンションの一室で聞いた話でした。それはギターを弾き語りする「まのあけみ」さんの、歌の合間の話しでした。
「私達の食卓にのぼるエビやバナナは、東南アジアの人々の暮らしを犠牲に成り立っているのだよ。」ショックを受けました。誰かを犠牲に生きているなんて思いもよらなかったのです。それから我が家ではエビやバナナが消えました。

 そのことを忘れ年月は10年以上たち、私は求めていた「生涯現役で暮らしたい・自分に正直にいきたい・できることなら人の役に立つことがしたい」という思いを胸にもち、女性起業セミナーを受講しました。そこで対等なパートナーシップにより発展途上国の人々の自立を目指し、食品・衣料・雑貨などを扱う「フェアトレード(公正貿易)」に出会ったのです。とても惹かれました。あの時聞いた話のショックは、私の引き出しに長くしまってあったのでしょう。私自身はその時は気づいてなくインタビュー等受けて「そういえば….」という感じで思い出したくらいです。そして偶然が重なりあいながらも手繰り寄せ、途上国の人々と共に生きることができ、人が出会い、さまざまな情報が行きかう場としてフェアトレードのお店「風“s(ふ~ず)」を立ち上げ14年近くの月日が流れました。

 14年前よりフェアトレードは広がったでしょうか? 小売店の視野からみたらまだまだです。そこでひらめいたのは、環境・人権問題に深くかかわるフェアトレードを知ってもらうために、行政、企業や商店、NPO/NGO団体も学校も地域市民も皆で推進する「フェアトレード・タウン」の運動です。2000年にイギリスではじまったこの運動は現在760以上の街に広がっていて、現在も増殖中! 日本はまだ一つもありません。
 品物を購入することをきっかけに、世界と深くつながりのある私達の暮らしを見直せます。南北問題を身近に引き寄せることで、足下の暮らしでも同じような事が起きていないだろうか?働きに見合った代金を支払わず、「安さ」だけを求める生活が、環境や人権を破壊し、私達のコミュニティを壊しているのではないか?そんな問いが生まれ、フェアトレード・タウン運動と連動する新しいコミュニティの誕生を期待して「名古屋をフェアトレード・タウンにしよう会」を2009年に設立しました。

土井さんがお店を始められた時からお付き合い頂いています。正義感が強く、まっすぐで、年々活動の幅を広げていかれる行動力に、見習わなくちゃと感心するばかりです。


41号「手放す力」野村哲也さん 2010.05


野村 哲也(のむら てつや)
写真家 冒険家 作家
静岡県熱海市在住
http://www.glacierblue.org/
e-mail:tetsuya@glacierblue.org 


人生の岐路に立った時、僕はひとつ決めている事がある。
「心がワクワク、ドキドキする、楽しい方を選択しよう」と。

 写真家という職業を選んだのは20歳のとき。動物写真家の星野道夫さんの存在が大きかった。アラスカでお逢いし、その生き方に一目ぼれ、憧れた。星野さんと同じ世界を見てみたい。その世界で自分を表現したい。そう思うのに余り時間はかからなかった。
アラスカを皮切りに、南極、南米、アフリカ、アジアなど、計81ヶ国の自然を撮影する中で、僕は「地球の息吹き」に魅了された。
地球はなんて完璧で美しいのだろう。

 2007年~2009年まで、世界で最も美しい秘境「パタゴニア」に移住したのも、ごく自然な成り行きだった。パタゴニアとは、南米チリ、アルゼンチン両国にまたがる南緯40度以南の地を指し、僕はチリの森の中で過ごした。テレビや新聞の無い生活が与えてくれたもの、それは自分にとって必要と不必要の取捨選択だった。

 10年前から気功や鍼灸、漢方をはじめとする「氣」の勉強を続けているが、知れば知るほど、感じれば感じるほど、僕たちは、多様なものと関わり、無数の生命から助けられ、絶妙のバランスで生かさせて貰っていることに気づかされる。そして、自然界はいつでも僕たちに無限のエネルギーを分け与えてくれる。それらを受け取るも、受け取らないも自分次第。境は自分が自然から守られている、または自分と自然が繋がっていると感じられるかどうか。

 神社仏閣に参拝させてもらう時も同じ。聖地からエネルギーを頂き、頭から体、足から大地へと流れゆく氣の循環。手を合わせ祈ることは「今日も生かして頂き有難うございます」と「貴社の益々のご発展をお祈り申しあげます」の2点だけ。
 「聖地とは、願望ではなく感謝の祈りを置いてくる場所」とチベットの聖山・カイラス山の巡礼者から教えてもらい、パタゴニア最南端の島に住むウルスラ婆さんは「私が一番軽蔑する人は貯める人。大切なのは、まず一歩踏み出し、手放すこと。それが幸福の道に繋がってゆくんだよ」と語ってくれた。

 世界中には、無名の賢者がたくさんいる。そんな人たちの声に、常に耳を傾けていたい。「何でも体験、どこでも勉強、ダメでもともと」の気持ちで、周りにいてくれる人たちの幸せを模索しながら、好きなことを好きなだけ、死ぬまで遊びきりたいと思っている。

野村さんと初めてお目にかかったのは10年以上前のこと。静けさとイキイキとした語り口が同居した不思議な雰囲気の若者だなぁと感じたものでした。久しぶりにお話しを伺い、自然と対峙する中で育まれることのなんと素晴らしいことと思いました。


42号「ユーモラスな人懐っこい人たち」伊勢戸由紀さん 2010.07

伊勢戸 由紀(いせと ゆき)
株式会社にんじん 代表取締役社長
〒485-0029 愛知県小牧市中央2-246
TEL0568-71-1552  FAX0568-71-1504
URLhttp://www.ninjinclub.co.jp
E-mail iseto@ninjinclub.co.jp

ユーモラスな人懐っこい人たち

 小学2年の冬、姉妹3人並んで寝ていたら夜中だというのに誰かの声に起こされた。大勢の話し声も聞こえてくる。こわごわ、ねぼけまなこで部屋の電気をつけると、小さな人差し指くらいの人間が私のふとんの上に30人か40人くらいいた。みんな私をみあげて、みつかった!という顔をしている。触ろうと思って目が合ったとたん、ふとんの中や畳の中にわーっと言いながら素早く隠れてしまった。びっくりして隣に寝ている妹を起こすが相手にしてもらえない。何だったのだろう…?でも怖いという感じはなく、とてもユーモラスな人懐っこい人たち。思い出すと笑顔になる。
 もう40年近くも前なのに、何かの拍子にあのときに近い感情がふーっと湧いてきます。あの懐かしい小人たちに私は見守られている。いつも会えない存在があり、人間以外の存在を感じる、ということをなんとなく受け入れて、おとなになってきて、これはなんとしても大事にした方がいい、という時、直感が働く。だから有機農業といういのちを生かす農業の流通の仕事を選びました。

 この私の直感は人間にはあまり効かず、自然現象に根源的に強く興味が働くようで、その場の人々の集合体(エネルギーのようなもの)とか時間とか瞬間とか、森とか自然とか畑などの場に立つと、ふっふっーと湧いてきます。秋田県側から白神山地に案内してもらった時や、日本一高い杉がある仁鮒水沢の樹令180年〜300年の林の中に入った時なんかも、皮膚が引っ張られて引き寄せられるような、耳が上に上に大きくなってつんと立つような感じがした。その存在感が、この場は大事だ、というメッセージを出していました。感じて信じること、それを大切にして仕事も進めてきています。

 こういう話はほとんど人にしたことがありません。あらぬ誤解も受ける。しなくてもいい、とあの時の小人たちから悟った気がします。してもしなくても、大切さは変質しないのだけれど、今回は鶴田さんの目がしてほしい、と訴えていたので書きました。仕事柄、何故「にんじんCLUB」を始めたのですか?、続けているのですか?といった質問を頂くので、なじみやすい答を取材用等に用意しています。勿論それも本当のことだけれど、私にとっては、いのちを大切にする仕事が、仕事なのであって、それ以外の仕事を選ぶ感性や幅や思考回路がもう小さい頃からなかったのだろう。

 「小人の生きる世界が保たれるようにしたい」、きっと小学生のときの私が、幼い野性的な自覚でそう選んでしまったのだと思う。この有機農業を支える仕事を通じて、豊かな日本の地形や山や川、木などの自然を、これ以上傷つけたくないと、感じ続けています。仕事が落ち着いたら、世界にいるだろう小人たちの民話や童話を集めて、“レストランにんじん”の絵本コーナーに置こうと思っています。そう、レストランには絵本コーナーがあるんです。ご自宅の絵本をレストランに提供してもいいという方は、ぜひご連絡ください。

*初めてお目にかかったのは、Eco-Branchを初めて間もない10年近く前です。その頃から有機野菜の宅配等、着実な仕事をすすめられる様子にすごいなぁと思っていました。今回初めてゆっくりお話する機会が持て、原動力の源に納得でした。



43号「江戸の玉手箱」辻川牧子さん 2010.09

辻川 牧子(つじかわまきこ)
江戸楽校 主宰 / 和楽舎 代表
東京都新宿区在住
e-mail: tourin1122@kkf.biglobe.ne.jp
URL:http://tsujikawa.net/

江戸の玉手箱

 16年前、江戸町人の暮らしや信条を伝承する方に出会ったことがきっかけで、江戸時代に興味を持つようになりました。
 当時の世界最大級の都市だった江戸の町。身分制度はありましたが、町人社会では「仏の前では皆平等」と考える人が多かったそうです。他者に対する敬意や誠意が重んじられましたので、威張ることや弱い者いじめは最低の行為。大店では主が小僧さんに「おはようございます」と挨拶されたら、主も立ち止まって「おはようございます」と丁寧に返礼。相手が若く目下でも、互角の敬意を払うのが人の道とされていました。
 敬意は自然にも向けられ、公儀の政策とも重なって、空には鶴や朱鷺が舞い、街は緑に覆われ、すみだ川の水は飲めるほどに澄み、生き物の宝庫だった江戸前の海は四季折々の恵みをもたらしたと言われています。

 私は「昔は遅れていて、今が一番進んでいる」と思いこんでいましたが、少しずつ学ぶに連れ、物質的には現代の方が豊かですが、精神性では貧しくなってしまっているのでないかと考えるようになりました。「煮え湯を捨てる時は、土の中の生き物が死なないようにさましてからね」、「卵は白身も黄身も食べるのだから、せめて白いメのところは土に埋めておやり」と子どもたちに教えていた人々。
 「働くは傍楽」稼ぐだけでなく、他の人たちを楽にすることでもあると言って、周りの人たちのことも気遣って生活していた甘くはないが優しかった世の中。物は少なかったが思いやりに満ちていた時代。したたかに、おおらかに、覚悟をもって世間を渡った人々。…       
 教育や技術、芸術など多くの分野で西欧とは異なった独自の発達を遂げていた文明開化以前の日本の姿は、思いのほか豊かで魅力に満ちていました。江戸の町に限らず、近代化前の日本は全体が、自然豊かな、人情に篤いところだったようです。幕末から、明治にかけて来日した外国人の記録には、美しい自然と、温和で陽気な、よく笑う当時の日本人の姿がたくさん書かれています。

 会計やカウンセリングの仕事をしてきましたので、歴史については知らないことばかりですが、昔の日本人の足跡を、夢中になって追いかけるうちに、語りべの仕事をするようになりました。現在は、江戸の町人の暮らしを中心に昔からの知恵を伝える講演を各地でさせていただいています。多くの困難を乗り越えて、今の私たちに命をつないで下さったご先祖さまたち。お陰さま、お互いさま、世間さまという言葉が生きていた昔の暮らしの中に、今の私たちの社会を生きやすい場所に変えるヒントがあるのではないかと思います。
名もない多くの人たちが遺してくださった子育てや商売繁盛、助け合い、自然に添う暮らし方などの知恵の数々を、今の世に少しでも活かせたらと願っています。

江戸の人たちがそこにいるようなお話を伺うと、日本語はこんなにきれいに話されていたのかと、自分の言葉遣いが恥ずかしく思われる語り口で、「着物はコスプレなんです」と言いつつ、ご先祖様たちの智恵を少しでも伝えたいという熱にあふれ、お話に魅了されました。


44号「ミツバチに支えられて」渡辺英男さん 2010.11

渡辺英男(わたなべひでお)
蜂飼/世界子孫代理人会会長
〒158-0082 東京都世田谷区等々力7-23-11
℡ 03-3702-1648
E-mail  watanabee@t00.itscom.net

ミツバチに支えられて

 1960年、獣医学を専攻後飼料メーカーに入り、「村おこし」に役立つと思い、飼料と畜産の普及に明け暮れていました。が、逆に村を壊し、穀物輸出国の自然を壊し、貧しい国の食糧を奪っていた事に気づきました。すっかり滅入っていた67年、出張先で全治6ケ月の重傷を負い、生還できたのを機に、「地球環境問題」をライフワークにする事にしました。その後、企画開発の仕事をすることになり、環境に寄与するものを選んでいた途中、ミツバチと出会いました。国際養蜂会議などに参加して情報を集めましたが、自ら飼育する必要を感じ、自宅で蜂飼を始めました。やがて、ミツバチ餌料の商品化に漕ぎ着けた頃、蜂から離れられない自分がいることに気づきました。それまで、いろいろな生き物を飼いましたが、初めての経験でした。他の生き物は主従関係になりましたが、ミツバチはそれを許しません。決しておもねず、私が悪ければ、チクリと窘(たしな)めます。友達のような横の関係にあるからだと分かりました。

 そして87年、国連から発表された「我等共有の未来」を見たとき、未来を保障するには子孫側からの主張が必要と考え、91年に会社を辞めて翌年に、17カ国の仲間達とWARD(世界子孫代理人会)を創立しました。又、これを普及する為に国際養蜂協会連合に関わり、これ等の活動と生活を支えるためにミツバチ生産物の会社を設立しました。あれから18年余、これら3つの仕事を続けられたのは、一重に、ミツバチと素晴らしい仲間に支えられたお陰と感謝しています。

 ミツバチは、私達に3つの貢献をしていると言われます。第1はミツバチ生産物で健康に寄与しています。第2は花粉交配で食糧増産や緑の増殖に役立っています。第3は環境指標で、ミツバチを調べれば自然環境の状態が分かります。私はこれに第4として、自然に調和するライフスタイルをあげたいと思っています。これから、人間も自然に調和し、地球の営みに合わせて生きなければ「持続不能」になると思うからです。
 ミツバチも社会生活を営んでいますが、「愛」がベースになっており、「希望」に満ちた素晴らしいお手本です。人間にはミツバチのような習性がないので難しいことですが、謙虚に学び、地球の営みに合わせて生きるシクミをつくり、倫理とルールでコントロールすれば、近づけると思っています。先般、ミツバチに倣(なら)って、この方策を「未来を奪わないで」のタイトルで出版し、只今世に問うているところです。

お目にかかったのは2005年の緑健文明を提唱されている草刈善造先生の合宿でした。「世田谷の蜂飼いです」との自己紹介に、思わず耳を疑いました。「東京で、蜂?!」世界子孫代理人会等、企業経営と環境への取り組みを早くから両立されておられ励まされる想いでした。


46号「もうじゅうぶん、がんばりました」鈴木重子さん 2011.04

鈴木重子(すずき しげこ)さん
ヴォーカリスト。いのちの響きを紡ぐ歌い手
㈱オフィス・ジラフ(鈴木重子事務所)
〒150-0021東京都渋谷区恵比寿西2-6-11
川上ビル5Fエムエムブルー内
℡080-5869-0690、Fax03-673-09670
URL:http://www.office-giraffe.com
e-mail: i@office-giraffe.com

もうじゅうぶん がんばりました


 震災から20日、この文章を書いている窓の外では、この春最初の桜が、淡い紅の花を咲かせ始めました。みなさま、いかがお過ごしですか?大切な方々は、ご無事でしょうか?
 私の住む東京・武蔵野では、それほど大きな被害は出なかったけれど、それでもあの日から、悪い夢を見続けているような気持ちがします。大きな揺れと、それに続く津波で失われた、あまりにも多くの命。原子力発電所の事故によりもたらされた、放射能とその恐怖、混乱。ささやかに続いていくはずだった、ひとりひとりの日々の暮らしの楽しみや夢が、あの日を境に見えなくなってしまったことが、悲しくて仕方ありません。

 疲れている私自身と、そして周りの方々のために、何かできることはないかと、震災の翌々日から「うたとお話と、ボディワークの会」を始めました。近くに住む方々で集まって、互いの悲しみや不安に耳を傾け合い、ボディワークでからだをいたわって、一緒に歌う時間。暗く思いつめておみえになった方々のお顔がほころんで、明るい笑顔が灯っていくのを、幸せな気持ちで見ているうちに、不思議なことに気付きました。ひととのつながりを実感しながら、ゆったり生きる。停電の暗闇と、不便な生活のなかで、私が生涯の夢と願っていたことが、実現しつつあるのです。

 思い返してみると、あらゆる繁栄や豊かさを享受しながら、私がいま感じている恐怖や絶望は、ずっと以前から、こころの奥底にありました。一日じゅう灯りの消えない街。お店の棚からあふれる、世界中の立派な食べ物。どんどんスピードを増す、情報と競争。このままではいけない、私たちの「いのち」そのものが、土台を失いつつある、という想いは、灰色のもやのように、ずっと私の裡にただよっていたのです。
 シンプルに、暮らしたい。恐れが現実となった今、悲しみと、絶望の底から、そんな想いがふつふつと湧き起こっています。自分のいちばん近くから、ひととつながりたい。助け合い、慈しみ合って、一瞬、一瞬を大切にしながら、生きる喜びをじゅうぶんに味わって、暮らしたい。
 より早く、より多く、もっと、もっと。私たちの社会は今まで、そうやって自分自身を追い立て、発展してきました。原子力発電は、そんな私たちが、意識的、あるいは無意識に作り上げてしまった、かわいそうな生き物のようだと思います。私たちは、もうじゅうぶん、がんばりました。この星のすべてのひとびとが、困難な想いを共にしている今こそ、今までの努力にお礼を言って、新しい価値観や生き方を、みんなで模索していく時ではないでしょうか。生きとし生けるものすべてが、ありのまま、そのいのちを全うできる、未来のために。100年後、私たちのひ孫のまた子どもが「あのときのおかげで、今の幸せがある。」と振り返れるように。

鈴木重子さんアルバムより


最新CD 11th 「with you」 ウィズユー 

7thアルバム
A Breath of Silence」ア・ブレス・オブ・サイレンス

固くなった心に染みいるように、やわらかく静かに声が届いてくる。そんな気がします。

*世界の紛争地の平和の歌を集める「なんとかしなきゃ!プロジェクト」発起人
Breath for Peace「歌に息づく、平和への想い」、戦争の地にいるひとたちの息づかいを聴き、その悲しみや祈りの中で呼吸をともにしよう。そして、大きないのちの流れにつながろう。平和の歌を集めるプロジェクトです


浜松の中小路さんのご紹介でお目にかかり、柔らかでピュアな人柄に魅了されました。その輝かしい経歴を後で知り、その謙虚さ、ナチュラルさにますますファンになりました。とても多才で、有名なヴォーカリストにもかかわらず、Beな人にご登場頂きたいという厚かましいお願いも快くお引き受け頂き、ただ感謝です。



47号「FUKUSHIMA発~被爆も肥毒も浄化して!」佐藤喜一さん 2011.07

佐藤喜一(さとうきいち)さん
有限会社けるぷ農場 代表
福島県郡山市田村町細田字嘉成96

e-mail: green-dream@kelpfarm.com


FUKUSHIMA発~被爆も肥毒も浄化して!


福島原発の爆発そして放射性物質の拡散を知るまでは、僕の心の中に「被爆」という文字は丸っきりなかった。怒りしか生れない情報の海の中で、有難いご縁を数多く頂戴し、自然体で受止めてみると、僕ら自身は被害者であるけれども、反対!と意思表示もせず原発の電気を使い楽しんできたという点では加害者であることに気づかされた。そして自然の一員として自然に感謝して、心も体も浄化することを忘れてきたことが根にあると思う。

震災そして原発の爆発から3ヶ月が経った。世界のFUKUSHIMAに暮らす僕らは、大きなチャンスを頂いたと思う。放射性物質からの土壌浄化だけが問題ではない!農薬や化学肥料、除草剤、添加物、厩肥も堆肥も自然の許容量を遥かに超える量を投入し、土は冷たく硬く、過剰養分なのに栄養失調な状態になっている。自然は元に戻ろうと微生物や菌や虫、草を生やそうとするのに、人間の勝手な思い込みでクスリに解決策を求めてきた。

土壌を浄化し、鶏たちの飼料にもなってくれる大麦が、収穫を目前に黄金に輝き風に揺れている。堆肥も厩肥も使用せず、無肥料無農薬そして自家採種の自然栽培に取組んでいるが、その麦が、もしかしたら放射性物質からも土壌を守ってくれるかもしれない。自然に生えている草たちが放射能を鎮めてくれる微生物を集めてくれるかもしれないと思う。

そんな思いで僕は、自然栽培の米と天然菌で仕込んだ味噌、自然の塩に守られ、砂糖と動物性食品を極力摂らないことで、排泄能力と修復能力を高めながら、ニコニコしながら放射能と向き合っている。農場は放射線量が低い(郡山の中では!)が、自宅は避難を真面目に考える程度の線量区域にある。悩ましい環境のなかで試験を始めた。草を醗酵させたら放射性物質が落ち着いてくれるんじゃないか!という願いに近い思いだ。草をジュースにして、砂糖をいれて醗酵させてみる。温かいこともあり2日もすると醗酵始めた。3日目に草のみジュースは0.51μsv、草醗酵ジュースは0.31。8日目には草のみ0.41、草醗酵0.22。醗酵することは素晴らしい力を発揮するが、もしかしたら草だけをサイロにしても微生物や菌、酵素が活躍して、放射性物質を鎮めて僕らが住みやすい環境に戻してくれるのでないか!と期待がふくらむ。

土壌を浄化し、体を浄化する。すると自然が喜んでくれるし、僕らの心も喜べるようになる。そのために自然を尊重し、自然に学ばせてもらう。そして自然に順応する。だから月を楽しみながら、種まきや収穫、種取りの時期に農をさせていただく。山に触れ、水を思い、山の恵みも楽しませていただく。やっぱり心のゆとりを大事にしたいと思う。

喜びあふれるFUKUSHIMAのまちが世界中の光になることを心に、自然と向き合って体も心も喜ぶ食と農そして生き方を学ぶ場を計画しています。

㈱にんじんさんが開催された、会員さんに向け被災された生産者のお話を聞く会で初めて佐藤さんとお目にかかりました。自然農で育てた麦や草を飼料にされておいでの方が放射能汚染で自家飼料を与えることができなくなったにもかかわらず、自分も加害者だったとピンチをチャンスにしようと前を向いておいでのご様子にすごいなぁと思うばかりでした。アメリカ製の測定機を入手され、土地の浄化に取り組まれています。


48号「目に見えない世界の豊かさにひかれて」高野雅夫さん 2011.0901


高野雅夫(たかのまさお)さん
名古屋大学大学院環境学研究科准教授
e-mail:masao@nagoya-u.jp
ブログ:だいずせんせいの持続性学入門 http://blog.goo.ne.jp/daizusensei

目に見えない世界の豊かさにひかれて


 私の名古屋大学理学部での卒業研究のテーマは、放射性物質の崩壊の際に地球内部から放出される反ニュートリノという素粒子がどれくらいあるのか、ということでした。反ニュートリノは他の物質とほとんど反応しないので、どんなものでもすりぬけていきます。研究結果は、無数の粒子が、時々刻々私たちの身体をすりぬけて、地面の下から宇宙に向けて飛んでいっているというものでした。私は、目に見えない世界の豊富さを知りました。
 一人前の地球物理学の研究者になってしばらく後、大学に環境学の大学院をつくるという話が降ってきて、環境学の研究をゼロからスタートさせました。自然エネルギー、その中でも日本で最も有望な木質バイオマスエネルギー(ようは木を燃料として使うということ)について研究を始めました。森林や林業、山村のことなど、まったく素人でしたので、学生とともに愛知県豊根村に通い、地元の方からいろいろなことを教えて頂きました。
 その中、地区ごとに行われる伝統行事“花祭”を体験しました。一つの演目が2時間にも及ぶ舞が、夕方から次の日の朝まで延々と奉納され、その動きは激しく、とても普通の人間の体力や精神力でやっているとは思えず、舞場の空間そのものが、不思議な異次元空間のようにも感じられました。大きな釜が舞場の中心に据えられ、ゆらゆらと揺れる湯気を通って、全国津々浦々の八百万の神さまたちが釜の中にやってこられ、舞手に、その神さまたちが乗り移っているのです。夜が白々と明けたころ、最終演目「湯囃子」の最後の最後、舞手は手にした藁の扇で、釜の中のお湯を聴衆にかけまくり、舞手も聴衆もびしょぬれ、神様と一体となって、五穀豊穣、無病息災を祈るというものです。豊根村の人たちは、目に見えない神さまたちと、ごく普通に一緒に暮らしていました。なんて豊富な世界なのだろうと思いました。昔の人は誰もそういう広い世界に生きていたのです。今の私たちが、自分たちのものと思っている世界のなんと狭いことかと思いました。

 フクシマでは、放射能汚染という、日本の環境史上最大最悪の環境汚染事件が発生してしまいました。環境学の専門家として自分に何ができるかと、何度かフクシマを訪問して模索しています。勿論放射能には退散して頂かなくてはいけません。汚染された土壌をはぎとったり、木の枝を切り払ったりするやり方は、効果はありますが、その場所から完全に放射線が無くなるわけではなく、はぎとった大量の土砂をどう処分するのかも分かりません。私たちはもう、放射能とともに生きていくことを余儀なくされているのです。
 私は、そのような外科的なやり方ではなく、生態系が放射能を取り除く自然なメカニズムを発見し、それを人間が手助けするような、いわば東洋医学的なやり方を模索したいと思っています。菜の花は、土壌の放射性セシウムを劇的に吸い取るわけではありませんが、吸い取ったものは、すべてタネに集めます。さらに油分には入らないので、ナタネ油を絞ったあとの油かすに、セシウムを全部集めてくれるというわけです。私たちが考えているのは、油かすを微生物で分解して溶液にして、そこからセシウムを取り除き、残った溶液もしぶとく肥料として活用して作物を育てようという作戦です。そうやって、生態系にとっても、人間にとっても価値のあるものを作り出しながら、少しずつ土壌を回復していくというやり方をやってみたいと思っています。
 目に見えない放射線も、この世界の豊富さの一部です。いたずらに敵視するのではなく、私たちの世界をより豊かにするという観点で、取り組んでいきたいと思います。

高野先生の新著が発売されました。

高野雅夫著『人は100Wで生きられる-だいず先生の自家発電30W生活』大和書房が発売されました。(残念ながら第一刷の印刷部数が少なく、大きな書店にしか並んでおりません。ぜひ重版ができるよう、応援をお願いします!)この本は、発電や電力利用の「ノウハウ本」ではありません。「エネルギー問題は生き方の問題」ととらえ、3.11以降の社会のあり方、私たちの暮らし方を私になりに考察・提案したものです。


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49号「地球一つで暮すワン・アース・プロジェクト」臼井 健二さん 2011.11


 臼井健二(うすいけんじ)さん
シャロムコミュニティー・舎爐夢ヒュッテ
〒399-8301 長野県安曇市穂高有明7958
 TEL&FAX 0263-83-3838
http://www.ultraman.gr.jp/shalom/
E-mail :shalom@ultraman.gr.jp

地球一つで暮すワン・アース・プロジェクト


 安曇野に、農的暮らしに心惹かれる人々が集まるコミュニティがあります。緑に包まれた半セルフビルドのシャロムヒュッテを中心にピースフードのレストラン、薪の石窯で焼くパンやピザ、フェアートレード、シュタイナーの木の小物やおもちゃ・本の販売。ギャラリースペースや安曇野のインフォメーション、自然栽培の農場、野外保育森の子等、ワークショップやヨーガ 各種の講座 コンサートなども行われ、いろんなものがつながり合い、心地よい世界を作り出し30余年になります。
 シャロムは皆さんに支えられてやってこられ、ずっと右肩上がりで有り難いことと感謝しています。でも心の中にトップとして葛藤がずっとありました。成長し続けなければならない資本主義の生き方はもう無理なんだと考えてもいました。10人でできる仕事が便利になり 8人でできるようになる。2人は余ります。でもこの2人の給料を払うために2割の増産を余儀なくされます。資本主義はずっと経済成長しなければいけないシステムなのです。

 福島の災害や リーマンショックに見る経済破綻 地下資源の枯渇 オイルピーク 温暖化の問題 水不足 これからくる食料危機を考えるにつけ、経済システムも変える時に来たように思います。降りていく生き方・分かち合う生き方です。有限な地球で無限な経済成長はあり得ません。それはシャロムの生き方についても同様です。パーマカルチャーや自然農の考え 知足の暮らしに移行しよう。「持続可能な幸福感に満ちた社会」はサーカー、ラビ・バトラのいう「プラウト主義経済社会」の実現で、シュタイナー ガンジーが目指した世界でもあります。ガンジーはあなたの望む世界になりなさいといいます。

 地震後、今までリーダーのもとに運営してきたシャロムを 宿とレストラン ショップ 農を分離 パートナーシップによる、より小さな組織とし、売り上げ・経費をみんなで分けるシステムとしコーポラティブ(組合方式)コミュニティーに移行しました。自立心を高め、支え合う、よりスモールな感覚です。各自が経営者 みんながリーダー 横型の生き方でもあります。競争も2割の増産をしなくてもすみます。農業は生きる要で、競争原理主義の中に置くものではありません。CSA(Community Supported Agricultureの頭文字をとったもので、「地域のコミュニティに支持された農業」という意味)を取り入れレストランと宿で支える。生きる基本である農を支え、暮らしのベースにした生き方です。

 シャロムは若い人に任せ、他にもうひとつ、小さなゲストハウスを始めました。家族労働で支えるシャンティクティという名のその宿で、地球一つで暮らす“ワン・アース・プロジェクト”の取り組みを行っています。今の日本人の暮らしは、自然と第3国を犠牲にした地球が2.5個必要な暮らし方。シャンティでは、食料とエネルギーを自給し、持続可能な暮らしができるモデルをつくりたいと考えています。地球1個で暮らす知足の暮らしが目標です。
 21世紀は分けたものが再び合う時代、分かち合いの時代、分断して競争する仕組みから融合して共生する時代を迎えています。大変とは大きく変わると書きます。今の大変な状態を“大きく変われるチャンス”ととらえたいと思います。分離の時代は終わり、一つに溶け合う時代です。あなたと私。宇宙も全てがひとつなのです。

      


21世紀の生き方を考えよう

これまでの価値観では持続可能することがむつかしくなっています。新しい生き方・暮らし方一緒に考えてみませんか?

ゆっくりずむでいこう

Beな人・・・


人の生き方は十人十色… 
Beな人
BEな人 49号まで
Beな人 50号~63号
これまでのBEな人

研究所レポート


21世紀を思考するライフスタイル 研究所レポート

これまでのレポート

エリオット君と学ぶ


自然に学ぶ 平井孝志先生環境塾 環境塾

これまでのエリオット君

つれづれなるままに


折につれ感じるあれこれ つれづれなるままに 

これまでのつれづれ


ひと手間かける楽しい暮らし 関連リンクLinkIcon

お耳拝借

素敵な人、こと、さまざまに。心があったかくなること、しみじみとした喜び。心のアルバム増やしませんか・・・。過去のイベント

瞑想のピアニストウォンさんと、スウェーデン在住コントラバス奏者森さんの唯一無二の響きに触れ、内に耳を傾ける

山元加津子さん初監督ドキュメンタリー映画「銀河の雫」上映会もあります

いのちの響きをつむぐ歌い手 鈴木重子さんと瞑想のピアニスト ウィン・ウィンツァンさん

グロッセ・リュックさん「植物の神秘」と世津子さんの「園芸療法のお話」とワークショップ

いのちの語り部大集合・・・山元加津子さん&AKIRAさん&広田奈津子さん

福島のおかあさん達が作品と一緒にやって来る

山元加津子さん講演と、映画「僕のうしろに道はできる」上映会

エコール・グロッセ 春 「植物の神秘・虹色の種」2013.0413

グロッセ・リュックサン&グロッセ世津子さんによる植物の不思議な世界

サティシュ・クマール「今、ここにある未来」上映会&講演会 2013.0403

サティシュ・クマールさん、初の名古屋講演です。通訳辻信一さん

森霊の巡礼 ワタリガラスの神話と祈りの音」2012.0923

アラスカ先住民ボブ・サムさん&奈良裕之さん

グロッセ・リュックさん&グロッセ世津子さんによる植物の世界

新得農場代表 宮嶋望さんに学ぶ自然の力

つながるいのちの感謝祭 2011.1120

2011年、いのちの感謝祭 べてるの家向谷地さん&べてるの仲間たち

つながるいのちの上映会「森聞き」2011.0925

ドキュメンタリー映画「森聞き」上映会&トークセッション

ともしびの巡礼~ワタリガラスの神話と祈りの音2011.0910

共にガイアシンフォニー出演のボブ・サムさんと奈良裕之さんの神話の会

つながるいのちの上映会vol.2「ミツバチの羽音と地球の回転」2011.0731

映画「ミツバチの羽音と地球の回転」&トーク&分かち合い

いのちの響きを紡ぐ二人の世界2011.0618

山元加津子さん&鈴木重子さんのジョイント

つながるいのちの上映会「幸せの経済学」2011.0522

映画「幸せの経済学」&トークセッション&ワークショップ

江戸の知恵、日本人の心 2011.0313

江戸の語り部辻川牧子さんの「もうやっこ寺子屋」

山田周生さんエコトーク&丸山さんライブ2011.0220

終了しました

てんぷら油で地球一周山田周生さんとビリンバウの丸山さんトーク&ライブ

つながるいのちの感謝祭  2010.10.09

2010年10月9日終了しました。
いのちのてざわり感じていますか

たかはしべん“心のおくすりコンサート”

終了しました。

山元加津子さんの思いっきりkakkoワールド

2010年6月13日終了しました

今年のkakkoワールドは、じい こと小林正樹さんとのジョイントです

いちじくりんLinkIcon

水野スウさんの”ほめ言葉のシャワー”ワークショップ

2010年6月26日終了しました。

大人気の水野スウさんの「ほめ言葉のシャワー」お話とワークショップ

紅茶な時間LinkIcon


今日も賑やかな会社のあれこれ